流行りに乗って趣味:人工知能やってます。シンギュラリティはいつだ?人工知能時代にどう生き残っていくか?みたいな話題も多いですが、ITの世界にいるならばあれこれ話すよりやっぱり自分の手で触るのが一番ですよね。
簡単に出来るものはどうしたって地味目なことが多いですが、今見た目にも分かりやすいことをやっているのでそのレポートとあれこれ。
今回試すのはこちらのプログラム。
もう一年以上も前の記事で界隈の人からすればとっくの昔の話ですが、いま見てもやはり衝撃的。
僕は元々趣味で歌い手データベースという、ネット上で初音ミクなどボーカロイド楽曲等を歌う動画をアップロードする人達のまとめサイトを運営しているので、そのプロフィールイラスト画像約35,000件をこのAIに約1日学習させたらこんな形で顔イラストを生成してくれました。
うーん、ユーザーが皆自由に書いている絵なのでどうしても構図にバラつきが目立って中々難しいですね。ただ、それでもちゃんと顔の形を成していくのがすごい。
またこのAIは別に顔の生成しかできないわけではありません。画像から目や鼻、口などを認識して学習して画像を生成してね、などとルールを与えてはいないのです。(旧来の人工知能研究の大半はそんな感じでした。)
AIが与えられた画像の中から勝手に特徴を抽出しそれを元に画像を生成しているところが面白いんですよね。
なので顔画像でなく、趣味で僕のパソコンに入っていたNASAのInstagram画像約2,000件を与えてもこんな具合に学習をしてくれます。
なんだか宇宙の誕生を感じますね。素敵。
人工知能の目指すところって別に綺麗な顔画像を生成するところにはありません。「汎用人工知能(AGI)」という言葉のとおり、汎用的な知能の獲得を目指しているわけです。
alphaGoだって囲碁で人類に勝利をすることが目的でなく、その過程の学習能力の向上にこそ目的があります。なので、いわゆる定石を覚えさせたりということはせず(というかルールすら知らない)、とにかく人間の棋譜を学習した結果に基づいて一手一手を打っています。
このプログラムも同様に、イラストというわかりやすい部分で目に見えてAIの学習進捗が見えるということに意義があります。畳み込みネットワークや敵対的生成学習(GAN)の効果を身をもって体験できますからね。
ちなみにalphaGoに関してはこのポッドキャストを聴くのをオススメ。人工知能の専門家ではないですが、海外の前線で働くハイパーな日本人エンジニア3名が語るalphaGo解説回です。プログラミングも囲碁も両方わかる方々が話しているので、変な解説を読むよりよっぽどためになります。
他にも今AIによってどんなことができるかは、このサイトにまとまっているので見てみると面白いですよ。先日話題だったGoogleのAutoDrawなんかもばっちり掲載されていますね。
ブラウザ上で色々自分で試せるものも多いので、それで遊んで雰囲気を掴むっていうのはとても良いことです。
今の延長線上に汎用人工知能はあるのか?
こんな形でweb上に公開されているディープラーニング関係のコードを触るとわかるのですが、現状のAIというのは僕らの頭の中にある「人工知能」にはまだ遠い状態です。
最近人工知能という言葉がもてはやされ過ぎて、後は機械の性能さえ上がれば人工知能は完成する!みたいに思われている方も多いですが、現実にはまだまだ多くのブレイクスルーが必要となります。
今はまだ機械が人間に近づいたというより、機械の出来る範疇が広がったという表現の方が近しいでしょう。
でもそれが人間の脳の仕組みを模していたり、特定の分野では人間を越えてきた辺り、僕らの思う人工知能に近づいてきているのもまた確かです。
それは人間達が「直感」や「センス」と呼んでいた領域が、すべてではないにしろ学習で作れるということが今alphaGoなどの実証としてわかってきたからです。囲碁は直感が大事なゲームだとされていましたし、機械には直感がないと思われていましたから。
直感やセンスが学べるなら、投資・プログラミング・作曲・文筆・絵描きなど様々なことを機械ができるようになっていくかもしれません。
そうやって人間にしかできない、と思っていたことを一つ一つ解きほぐしていくことで始めて、僕らの思う人工知能が出来てくるのだと思います。
その辺りの探求は研究者の方々にお願いすべきところですが、今後その恩恵に預かっていく僕らは少なくともこんな現状を今しっかりと認識しておくことが一番重要なことです。
そんなわけで参考記事と参考図書。
・人工知能技術の健全な発展のために | Preferred Research
なぜAIを怖がる人がいるのか
また先ほど"僕らの頭の中にある「人工知能」"という言葉を使いましたが、たびたび気になるのは、この頭の中にある人工知能に対するイメージが、明るい人と暗い人やけにくっきり分かれるな、ということです。
僕の知人は基本その辺明るい人が多いので一緒にご飯を食べながら、「早く仕事奪ってくれ!」などと話をしています。笑
そしてこのイメージの明暗というのは、人工知能が今どんな状態にあるかと学ぶこととは関係なく、ただただ記憶や感情に起因しているのだと思います。
そこで引用したいのは、Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅなどの音楽プロデュースでも有名なcapsuleの中田ヤスタカさんが2005年にリリースした「NEXUS-2060」というアルバムでのインタビューです。
蛇足ながら、このアルバムはcapsuleのSF三部作と言われますが、僕は三部作最後の「L.D.K」が好きです。capsuleの今と昔が混じったかんじがするので。
---インタビュー引用---
中田:ただ"SF"って言ってもどういうイメージでとらえるのかは人それぞれだと思うんですよね。多くの人のイメージって、たぶんメカ戦闘系だと思うんですよ。「マトリックス」で言ったらレボリューションズのロボットが機械の大群を打ち落とすみたいな。
明るくて綺麗で華やかで「こんな未来が楽しいんだ」っていう映画よりも、「こんな未来になっちゃったぁ」「サイバーパンク」みたいな、そういう科学のダメな部分を描くダメな話が多いしね。
(略)
capsuleが描きたいSFっていうのは、そういう感じのものじゃないんです。例えば「天空の城ラピュタ」もSFですよね。もちろん「ドラえもん」もSFですし。だけど"SF"って言って"ドラえもん"がまず浮かぶ人はいないと思うんですよ。でも、そういう話なんですよ、capsuleでやってこうっていうのは。
(引用ここまで)2005年にこんな話をしているのが面白すぎるんですが、まさに今だからこそ改めて読むべき話です。
先ほど引用した日本の東大発AIベンチャーPFN関連でもこんなニュースが出ていましたが、今後も世の中で話題になる悲観論の根本にあるのは、こんな程度のものだと思うんですよね。
たしかにリスクを考える必要はあるかもしれません。でも結局、一般の人は今後AIがどうなるかって部分に直接的な影響力は持っていないわけで、そこを暗く考えるのって何も生まないのですよね。
これからますます楽観的な人と悲観的な人の思考は離れていくんでしょうけど、一人でも多くの人が早くドラえもんの世界になって欲しいねって、話すような世の中になっていくことが大事です。
そんな世論的ベースがあった上でお国の方の一部の方がしっかりとリスクマネジメントしてくれればそれで良いんです。
不安になるような部分は優秀な方々に任せて、僕らはAIで遊びながら、どう上手く付き合っていくかを考える方が建設的だし、健やかに生きていけます。子供がiPhoneをおもちゃにインターネットに慣れ親しんでいるように、AIともそうやって親しくなっていけると良いですよね。
過度にAIに期待する必要もないし、過度に悲観的になる必要もありません。ただ早くドラえもんの時代カモン!、そう思うのみです。