ニコニコ動画には、「作業用BGM」タグというアングラながらIT系の人も音楽業界の人も見てしまっているようなタグが存在しています。今回作ったのは、そのタグに特化したデイリーランキングサイトです。
ニコ動自体にランキング機能は存在するのですが、サイト全体のランキング、特定の大カテゴリのランキングに限られています。そのため、中小タグのランキングというものは存在しません。
なので、その中小タグの一つとして存在する「作業用BGM」のタグ専門のランキングサイトを作成しました。
利用するにあたって。
- ■At your own risk.
- ■気に入った曲があれば、ニコニコ市場(Amazon)でポチる。
- ■そもそも好きなアーティストの曲なら、ニコ動なんぞ聞かずアマゾンなりiTuneStoreでポチる。
作った経緯というか思いというか。
ポチるポチる書いていますが、ニコ動はまだ権利処理が出来ていない部分があり、作業用BGMもそのカバーされていない範囲に当てはまります。
なので、正しく・早くクリエイターに還元するためには、ぜひポチっていただくのが一番です。その方が音質も良いですし。
そんな中、作業用BGMにはどんな価値があるのでしょうか。
『今は知らないけど、潜在的に好きな音楽ジャンル・楽曲を知ることができる場。』
それがこのタグに関して僕が感じている良さです。
IT的にはweb2.0(死語)的にユーザーが楽曲をレコメンド(もはや死語)してくれる場。今っぽくいうとキュレーションしている場でしょうか。
音楽を知る機会
よくこの手の話になると出てくるのが、『DOMMUNE(ドミューン)を見ている人が、新たにCDを買っている。』というお話です。
(・・厳密なソースなしに、この話ばっかするのもズルいなぁとは思いますが[要出典]。とはいえドミューンな出演したDJのイベントはたしかに増員がかかるというのは、初期の頃から言われています。)
金土を休信日にして週末はリアルな現場に繰り出すことを促すというDOMMUNEの目論見通り、出演した各DJの週末のイベントには、かなりの増員が達成されているとのことである。
じゃあDOMMUNEがなにか新しい音楽を生んでいるのか、いままでなかった新しい文化を生んでいるのか、というと、全てにおいてそうというわけではありません。
東京に住んでいればageHaなどクラブで聴ける曲を、場所をネットに変えて広めているだけっちゃだけなわけです。
結果、いままでクラブに行ったことがない人、普段クラブに行きづらい環境にある人も、普段聴かない音楽に触れることができ、それがCD購買やクラブの増員に繋がっているのでしょう。
これは世の中に良い音楽がないから買わない、というよりも、世の中に良い音楽があっても、それを知らない人が多いということなのだと思います。
では、なぜ世の中にまだまだ知らない音楽があるのでしょうか。
一般的に音楽を知る機会というのは、テレビだったりラジオだったりがやはり大きなウエイトを占めます。そしてそこで知れる音楽のジャンルは、極一部にすぎない、これは大きな理由でしょう。
僕自身、学生自体は深夜にカウントダウンTVを親に隠れながらこっそり見ていました。(あのCGキャラはなんだったのか。なぜめちゃイケは よくパクッていたのか。
また中間試験の勉強をしつつFMラジオもよく聞いていました。実家は関東圏なので、bayFM78あたりです。ベ~イエフエ~ムセブンエ~イトというコールを何度聞いたことでしょうか。そしてなぜラジオは6月ぐらいに「先取り!夏に聴きたい音楽特集」11月ぐらいに「どこよりも早いクリスマスソング特集」みたいなことをやるのか。
などといった思い出話はさておき、テレビを見たりラジオを聞いたりして、世の中の音楽を幅広く聴けるのか。それはやはり否で、どうしてもJpop中心になります。
何を今更という話ではあるのですが、最近Facebookを見ると改めてそれを感じます。
このごろは一般の層にFacebookが普及してきた影響か、友達かも?によく学生時代の友達が出てきます。その時、プロフィール好きな音楽欄を見るとなにが書かれているか。多くの場合は、こんなところです。
- EXI○E
- A○B48
- ジャ○ーズ系
極端な例ではありますが、わからなくはないでしょう。
もちろん、好きなアーティストがいるというのは、とても良いことです。
ただ思うことは、いろいろな音楽を聴いた上でそのアーティストが好きと言っているのか、それともほぼそのアーティストの情報しか入ってこない中でそのアーティストが好きと言っているのか、ということです。
これは、今音楽が売れないうんぬんという話に繋がってくると思います。
音楽が売れないうんぬん
今、世の中で音楽が売れないというお話がありますが、これに対する解答として、CDの値段が高い!握手券がついていない!SONYの曲がiTuneStoreでなくレコチョクでしか配信されていない!などという話が出てきます。
どれもこれも正解だと思います。しかし、かといって今例えばアルバムの値段が1000円になったからといって、今音楽を買わない人達がアルバムを買うようになるのかというと、そうとは限りません。
また、他にも最近、SONYが定額楽曲配信サービスをスタートしたとか、海外でspotifyという定額楽曲配信サービスが流行っている、みたいなトピックがよく出ます。
- http://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/20120704_544807.html
- http://www.musicman-net.com/SPPJ01/01-2.html
では今後こういったサービスが流行るのか。全てのレーベルをまたいだ定額の音楽配信サービスが日本に出来た時に、そのサービスを多くの人が利用して、音楽業界が盛り上がるのか、と考えると、中々そういうイメージが僕には出来ません。
というのも、やっぱり音楽を買わないというのは、価格が高いからとかの前に、新たに欲しい音楽がない(わからない)からって部分がかなりでかいと思うのです。
学生時代ある程度カラオケに行っていた人であれば、好きなアーティストは?と聞けば、4.5人ぐらいすぐに出てくるでしょうし、容量がちっさなiPodであればそれが埋まるぐらいの楽曲数を持っているでしょう。
でも、そんな人達にそれ+α、もっと毎月たくさん聴きたい曲ある?と聞いたら、別にないというのが大半の答えでしょう。せいぜい自分が好きなアーティストの新譜が出たら、チェックするぐらいです。
では、どうすればそんな人達にさらに音楽を聴いてもらうことができるのでしょうか。
ネットで知る、新しい音楽ジャンル
その一つの解答としてあるのが、新しい音楽ジャンルを知ってもらうということだと思います。
先に書いたことですが、テレビやラジオを見ている限り、Jpop・邦ロック的な情報がほとんどです。それ以外のジャンルを音が聴けるマス媒体から知ることができません。
それ以外のジャンルに詳しい人がいるとしたらそれは、音楽好きな親だとか、音楽に詳しい先輩とかがいて、その人に教えてもらった、みたいな大変アナログな情報経路でしょう。
そんな、いままでアナログでのみ発生していた、音楽情報の流通、それが少しでもネット上でも発生してもらえればと思っています。
○万曲配信!月々○○円!オリコンランキング○位!みたいな情報の前に、「その曲が好きなら、この辺りもオススメだよ~」と教えてくれる存在がもっとネット上にも必要だと思うのです。
DOMMUNEというのは、その一端でしょう。DOMMUNEを知るまで、クラブミュージック的なジャンルの情報をほとんど持っていなかった人がいるからこそ、DOMMUNEきっかけでCDを買った!という人が出てきたのでしょう。
他にも、というネットラジオサービスでも、クラブ界隈の音楽を無料で聴きつつ、サイドバーにあるリンクから今流れている音楽のCDを簡単に購入することができます。
また、そこそこ有名どころですが、でも登録したお気に入りアーティストとテイストが似たアーティストの曲をネットラジオとして、何曲かまで無料で聴くことができます(それ以上は月額制)。プログラム的なレコメンドなので、ちょっと微妙ですけど。
んでは、これらのネットサービスで世の中の音楽ジャンル諸々把握できるよねー、という状態かといえばまだまだ足りない気がしています。
DOMMUNEやblock.fmでクラブ的なジャンルの曲をある程度知ることができても、他のジャンルの曲を知ることはできないわけです。
そしてLast.fmだとか、Amazonの「その商品を買った人は、この商品も買っています」みたいにプログラムで行ったレコメンドはちょっと微妙です。(特にアマゾン先生ェ・・
なので、いろんなジャンル版DOMMUNE・block.fmみたいなものがあれば良いなと思っています。
作業用BGMについて
そして、そんな場として存在するのが、ニコ動の作業用BGMでないのかなと思っており、今回こんなサイトを作成したわけです。
ボリューム的にはアニソン・ゲームソングが多いですが、ちょっと掘れば、マイナーなジャンルでも結構多くの良曲が紹介されています。
基本、一つの作業用BGMには10曲前後収録されているわけですが、10曲全部同じアーティストだけで構成されているわけではありません。一つのテーマに沿った、10人のアーティストの曲が収録されています。
例えば、
- ○○ジャンルの初心者に聴いてもらいたい曲
- 寝られない時に聴きたい曲
- テンション上げたい時に聴きたい曲
- ドライブしながら聴きたい曲
- 夏を感じる曲
- もっと評価されるべきな曲
- 2011年UKチャートまとめ
のようなテーマを軸に、各ジャンルに精通した方々が様々なアーティストの曲をまとめています。そのため、自分が知らないジャンルを知るという際、非常に便利です。アーティスト名を知らなくとも、ふわっとしたイメージで曲が探せるので。
ここがyoutubeなんかとの一番の違いでしょう。youtubeにはニコ動よりも曲数があると思われますが、知っているアーティスト名を検索して聴くというのが基本的な行為です。そのため、「詳しくないんだけれど、ハウスの良い曲知りたいな。」といった要望にはあまり応えられません。
メジャーなアーティストで自分が知っている曲を探すにはyoutube・自分が知らないアーティストの曲を雰囲気やざっくりとしたジャンルで探せるのが、ニコ動作業用BGMという位置づけでしょうか。
知らない曲を知ってもらうには、まずは導線が必要です。興味付けが必要です。そこに必要なのが、「人の紹介」というとてもアナログな行為です。
良い音楽の紹介というのは、プログラムでできるものだとは思えません。どこまでいっても紹介してくれる『人』が必要です。
紹介してくれる人がいなければ、例え全曲無料で聴けるとしても、自分が知らないアーティスト・曲にたどり着くことはできません。本当はそのアーティストの曲が潜在的には好きかもしれないのに。それは非常に残念なことです。
そしていままでは、その紹介という行為が、とてもアナログに狭い範囲で行われていました。しかしそんなアナログが行為が、ネットを通すことで数千・数万という人に届く可能性が今はあるのです。
権利関係うんぬん
とはいえ、権利関係的に限りなくブラックに近いブラックなこの界隈。早く権利関係が正しく処理されればなぁと思います。
最近周りでちょくちょく、「BGM聴くためにプレミアム会員なったよ~(長時間の動画はよく読み込みが止まるから。」みたいな声を聞くことが増えてきました。
これってニコ動にはお金が入っていても、それがクリエイターまですべて届いていないという、とてもよろしくない状態です。
ニコ動全体としては、JASRACとの一部包括契約を結んでいたり、avexとのあれやこれがあるので、話自体は進めているのかなぁと信じている次第ではあります。
そうでなければ、作業用BGMなんてタグがついている動画は速攻ですべて消されても仕方ありません。10月以降の違法DL刑罰化の話もありますし。
この辺りがクリーンになってクリエイターに利益還元されるようになる、あるいはいっそのこと全作業BGM一斉削除、そのどちらかの結末を望むしだいです。
そして、その結末をこのサイトを通して見守っていければと思っている昨今です。
どんな結果になるかはわかないけれど、前者であればプレミアム会員費+1000円ぐらいまで払うよ、と。もし似たようなことを感じている方がいれば、ぜひアクセスしていただければ幸いです。